食品の素材のどの部分を残すかによって、乾燥方法は異なってきます。天日干しのような自然乾燥を行い、できたものが、意図していた香りなどをそのまま維持しているのであれば、食品乾燥機でも同様に乾燥物を製造することができます。
また一方、歯ざわりを維持したい場合、即席ラーメンのエビのようにフリーズドライが用いられます。天日干しの場合、エビでもネギでも、乾燥時に素材を構成する細胞の中の酵素の反応で、細胞自体の成分の分解が起きます。また、その分解産物同士の化学反応により、旨味が出たりもします。乾燥エビなどは独特の香りがあり、この強い香りが料理に必要な場合もあります。
今何をターゲットにして乾燥物を作ろうとしているのか。ビジネスにするにはここが重要です。最近、単にフリーズドライをしたいという農家さんが増えています。また、味噌汁を販売したいという方も多いです。そこで私が申し上げるのは、フリーズドライ装置の価格とスループットです。100Lの水分を除去する装置だと、一般的にカスタムメイドで作ると3000万円以上かかると思います。それが半額としても高いですね。でも、多くの農家さんは補助金を使って購入したいとおっしゃいますが、補助金税金。最後には補助金を使って始めたビジネスが実って納税していただかないと、これは全て国民負担となります。最初から補助金目当てでフリーズドライを始めた方で減価償却できている人を私は知りません。小規模だと10年以上かかると思います。
ポイントは乾燥物の販売単価です。これが味噌汁の何倍も高価なものであれば、フリーズドライは採算が取れますが、単純に植物を乾燥しても製造物の単価が低いため、採算取れません。
そこでやはり最初は、食品乾燥機で何ができるかを考えたほうが、ビジネスとして成り立つと思います。他と差別化するためにフリーズドライに補助金で挑戦。リスクが高すぎます。自分のお金ならば、いつまでに回収できるが算盤はじきますが、補助金の方は回収を考えていない方ばかりです。これは問題です。補助金はあくまで補助。全額補助金はそういう意味で貸す方もリスクが高いと思います。銀行なら事業計画を数字で説明する必要がありますよね。
食品は天日干しのような細胞の分解、消化プロセスで初めて旨味を作るものが多いです。旨味成分のイノシン酸は細胞内の核酸の代謝物です。新鮮なものの旨味は、また他の成分や舌触りとなります。食品乾燥機で植物や肉、魚を乾燥させる時、その乾燥温度の設定で味が変わってきます。これこそが「他との差別化」だと思います。
スループットで考えますと、フリーズドライヤーは食品乾燥機(フードドライヤ、ドライフルーツメーカー)の数十倍の価格であることをご承知おきください。