肉の旨味と肉の新鮮度

お肉は新鮮なものは美味しくありません。それは、旨味成分は肉のタンパク質成分の分解物と、肉の細胞のなかの細胞核にあるDNAが分解して旨味成分になります。したがって、新鮮なお肉は美味しくありません。鰹節も高級なものは味が全く違います。それはカビによる熟成工程を経ているためです。肉の場合も冷所で熟成させています。カビがは生えるけれどもバクテリアの増殖が遅い微妙な温度です。水分を少なくするとバクテリアは繁殖しにくいのですが、カビはそれほど水分含量が多くなくても増殖可能です。肉は腐敗しないくらいの温度の冷所に保管しても、細胞破壊により細胞中の様々なタンパク質分解酵素によって自己融解していきます。DNAも細胞が崩壊していくにつれて、カビなどによらずとも、細胞内部の自分の持つ酵素でタンパク質やDNAなどの核酸を分解していきます。しかし、カビで分解するほうが美味しいようです。鰹節もそうです。

食品乾燥は、野菜の場合には新鮮なままの乾燥のほうが良いと思います。野菜は自然と酸敗臭が出てきます。肉の場合は、新鮮な肉では旨味がありません。スルメが美味しいのは、イカが天日干し工程でゆっくりと乾燥する間に、細胞が分解して内部のタンパク分解酵素などが溶出し、細胞の構成成分が旨味成分に一部変化すえるためです。きのこ類もこのように、天日干しや冷凍によって細胞が壊れ、旨味が出てきます。

このように新鮮なものをすぐに乾燥して美味しいのは野菜、果物系だと思います。お肉は新鮮なものは美味しくなく、ジャーキーなどにしないと美味しくありませんね。細胞表面に付着したバクテリアを増殖させずに、細胞が自前で持っているタンパク分解酵素やDNA、RNA分解酵素が働くと、旨味が短時間で出てきます。酵素は高温にすると失活するため、お茶の葉は収穫して一度蒸気で蒸します。この高温で茶葉内の多くの酵素が失活し、葉の緑色を保ったままお茶にすることができます。一方、お茶の葉っぱを蒸さずに手もみして置いておくと茶色に変化し、紅茶を作ることができます。紅茶の製造工程ではこのように細胞内にある酵素を利用し、特有の色と香りを作り上げます。この工程は熟成とか発酵とか呼ばれますが、バクテリアやカビが関与する発酵とは異なります。

旨味が生成される工程がなんとなくわかっていただけましたら幸いです。

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カリカリ

食品乾燥に携わってはや9年。数十年に渡るバイオ研究の経験も活かしたご紹介をしたいと思います。