食品乾燥機の庫内をもっと高温にできないの? 〜技術課題〜

なんで食品乾燥機は最高設定温度が100℃とかにできないの?そうしたらもっとカリカリにできるのに。なんて思ったことはありませんか?
そりゃあ、価格さえあげられるならどんなものでもつくれます。笑
食品乾燥機の庫内は高温になります。したがって。通常の電動ファンはインストールできません。モーターは庫外の涼しいところにおいて、そこから長い金属棒を庫内に突っ込んで庫内でプロペラを回します。そうする事により、モーターに熱が伝わりにくくなります。棒を金属にするなら庫外に棒が出たところにプロペラをつけると、棒を伝わってくる熱をそこで冷却し、モーラーに伝わらないようにする事ができます。しかし、棒の途中にベアリングを設置する場合には高温に強いベアリングを設置しないと、直ぐに油が飛んでしまいます。
また、庫内を高温にすると熱が外部に伝わるので、筐体も熱が外に伝わり難くしないといけません。最近の冷凍冷蔵庫では薄い中空真空パネルを使っている物もあり、厚みを取らずに効率よく断熱することができます。
高温まで設定できる乾燥機としては乾熱滅菌器があり、これは200℃以上に設定できますが、筐体の上では卵焼きができる程に熱くなります。庫内にファンもついていません。食品乾燥機は庫内の空気を循環させる事が極めて重要で、これによって均一な乾燥が初めて可能になります。

カリカリ

食品乾燥に携わってはや9年。数十年に渡るバイオ研究の経験も活かしたご紹介をしたいと思います。

4"食品乾燥機の庫内をもっと高温にできないの? 〜技術課題〜"についての考え

  1. 最高設定温度が70度まで、または90度までというように、メーカーによって異なりますが、使用用途、高温設定が可能な事でのメリット、具体的な食材はどのようなものがありますでしょうか?
    宜しくお願いいたします‼︎

    1. お尋ね頂きありがとうございます。最初のお尋ねですので、やりがいを感じます(笑)。
      ではお答えいたします。乾燥食材はそのまま直ぐに食する場合にはバクテリアやカビの混入はあまり問題にはなりませんが、乾燥したものを長期保管したりすると、湿気も吸収し、場合によってはカビが生えてしまうことがあります。バクテリアの繁殖は相当湿っていないと増えないので、一定の乾燥状態であればバクテリア増殖は問題にしなくても大丈夫です。もちろん、乾燥する前の材料がバクテリア、特に食中毒菌に汚染されていると、これらは熱で殺菌しておきたいと思います。食中毒菌が生きたまま乾燥物に付着していたとして、これでおにぎりなどを作りと危険です。海苔などは乾燥しているから安全と思うかもしれませんが、あれにバクテリアが付いていたら大変です。おにぎり保管中に増殖します。したがって、食品乾燥機で製造したものはできる限り滅菌したものが好ましいということになります。もし、何かを販売する時は気をつけてください。ふりかけの材料も留意が必要です。白ご飯自体がバクテリア繁殖の絶好の場だからです。
      そういう場合に行うとりあえずの方策が、乾燥物をプラスチック製(熱に強いもの)の袋にパックした後に、袋ごと恒温槽(または乾燥機)に入れて80℃以上にして簡易殺菌する方法です。医療系で完全滅菌する場合には121℃くらいで圧力をかけて水分存在下で高圧蒸気滅菌、また、ピンセットなど熱に強いものは180℃以上で乾熱滅菌したりします。医療環境ではすべてのバクテリアを殺す、すなわち滅菌処理が極めて重要です。食品では大腸菌などのバクテリアの混入はある一定数以下なら認められています。コンビニのおにぎりは買った後に常温に置かれてしまうリスクもあるので、バクテリアが購入後に増殖しないように、pH調整材などでご飯自体を僅かに酸性にしてバクテリアの増殖を遅らせています。酢飯はバクテリアは繁殖しにくいです。

      私が乾燥品を販売するなら以下のことを行います。
      1)完全に乾燥させ、乾燥後はシリカゲルを入れて保管。
      2)湿気を通さない袋に詰めて、乾燥剤と脱酸素剤を入れてシーリングする。
      3)そのまま80℃〜90℃の部屋(恒温槽または乾燥機)に1時間以上入れておく。
      4)シールを貼る→「開封後はお早めに(2〜3日以内を目安)お召し上がり下さい。また、開封後の保管は乾燥剤などが入った密閉容器で保管し、なるべく早くお召し上がり下さい。

      こんな感じでしょうか。70℃だとちょっと心もとないですが、75℃なら処理時間を2時間くらいにしたら大丈夫と思います。ジャーキーは原料が肉なのでO157の混入も想定しておかなくてはいけないので、70℃以上での乾燥をお勧めします。ジャーキーの場合、肉は乾燥前に表面だけでも熱湯や蒸気で殺菌した後に乾燥させたいと思います。肉の中にはバクテリアはほとんどいませんが、表面についています。

      こんなことから、ガスを使った90℃以上に温度が上がる食品乾燥機も良い選択と思います。しかし、野外の納屋での運転となりますし、バーナーを使うので、定期的なバーナーのメンテが必要となります。火は自動でつけたり消したりするため、きちんと自動着火することが非常に重要となります。

      何か参考になりましたら幸いです。

  2. いつも興味深く拝見させて頂いております。丁寧な説明をありがとうございます。有機野菜の余剰農産物の乾燥商品化を目指して勉強中の者です。カリカリさまの乾燥技術に対する知識と愛情と情熱に感動をしています。カリカリ様の人生や技術の申し送りをして生きた証を共有したいと思っています!食品乾燥の技術について学べるおすすめの書籍があれば是非教えて下さい!(大学、研究レベルをお願いします!)

    1. ご返事が大変遅くなり、誠に申し訳ございません。
      書籍ですが、良いものを見たことがありません。はっきり申し上げて、これらの教育を農業高校や農学部において、食品安全の観点からきちんと教育すべきと考えています。公衆衛生の観点から、食中毒に対する知識は、乾燥食品を事業として行う場合には、大変重要です。食品乾燥機をご利用中の方で、動物用のジャーキーを低温乾燥で作られている方がいらっしゃいますが、人の食用には危険です。きちんとした知識がないと、致死的な食中毒菌の汚染があるまま食してしまうこともあろうかと思います。
      食品乾燥の書籍を作るとするなら、ジャーキーの作り方について、食品安全の観点からきちんと説明する必要があります。自治体は保健所もこのような案件については指導をしてくれると思います。安全なプロトコールに従って作成されることを望んでいます。植物や野菜はそれ自体で腐敗防御を備えたままの乾燥が可能ですが、肉に関してはスライスしたものは腐敗防御は皆無です。糖分が多い果実は糖濃度が乾燥によってたかまるだけでも防腐効果があります。
      例えばイカの塩辛ではバクテリアが繁殖できない塩濃度にしています。ねりウニには、酒精をくわえたもの、塩濃度を高めたものがあります。塩漬けは昔ながらの防腐手段です。砂糖漬けもそうです。
      ご参考になりましたら幸いです。

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